【リサ】「……」 一瞬、何を言われたのかわからず、沈黙した。 じわじわと言葉の意味を理解するにつれ。 【リサ】「なっ!? なななななっ……!」 爽やかな朝の話題におよそ似つかわしくない台詞を、平然と、しかも笑顔で口にする勇者様に、 わたしは返す言葉を失った。 【リサ】(なっ、何を言い出すんですかこの人はーーーっ!?) ここは私の家の前で、つまりは公道で、いつ誰が通るか分からない場所なわけで。 【リサ】(というか、されたの!? わたしそんなことまでされてたの!?) 勇者様の物騒な発言に、おぼろげな記憶を必死でたぐり寄せる。 【リサ】(……確かに、ゆうべは、勇者様とそういう関係になった。 な、なったわよ。なぜか。成り行きで……) 流されるままに1回されて、それから2回目――。 その後は意識を失って、気がついたら朝で、いつの間にか、自分の部屋の、自分のベッドで、 一人で寝ていて――。 【リサ】(……お、覚えていない……) ま、まさかぜんぶ夢だったとか。わたしの妄想だったなんてことは――。 【リサ】(ううん、それは無い。さっき勇者様も言ってたし、それにちゃんと2回目までは覚えているもの) ちゃんと覚えている――。 そこで初めて、自分の考えている内容の卑猥さに気が付き、かあっと頬が熱くなった。 【リサ】(や……やだ。わたしったら朝から何を考えているの。これじゃ勇者様のこと言えないわ……) おそらくひどく間抜けな表情をしているだろうわたしを見て、勇者様がけげんそうな顔をする。 【勇者】「今日はいつもと様子が違いますか? どうかされましたか?」 【リサ】「……どっ……どうって、そ……その……それは……」 急に話をふられて、言いたいことはたくさんあるのに、わたしはもごもごと口ごもってしまった。 だが、勇者様はわたしの返答を待つまでも無く、あっさり元の笑顔に戻ると、またしても とんでもない台詞を口にした。 【勇者】「それにしても。まさか、あなたから夜這いをかけてくださるとは。 とても光栄です。ありがとうございます」 【リサ】(かっ……かけてなーーーい!!) わたしは心の中で絶叫した。 【リサ】(誤解です! 夜這いのつもりなんてなかったんです! それを勇者様が、なかば無理矢理に! 強引に! ああでも、寝間着でうろうろしていた、わたしが悪いのかもしれない……。 ううん。そんな事ない。ここはわたしの家だもの。どんな格好してたっていいじゃない ……でも、無防備だったことは否めない。それにはっきり嫌だと言わなかったわたしにも責任が……。 ううん。言った。言ったはず。違うって、嫌だって、やめてって。そうだ。聞き流されたんですってばー! だいたい、初めての女の子にあんなに何回も、しかも、ペ――とかア――とか、なんですかそれは!? そういうこと詳しくないけど。よくわからないけど。普通じゃないわよね。絶対におかしいわよねっ!? それとも、勇者様の時代には、それが普通だったのだろうか……。 いいえ、仮にそうだったとしても、今は勇者様の時代とは違うし、しかも家主はわたしだし。 郷に入っては郷に従えという……) わたしは勇者様に反論すべく、必死で自問自答した。 だが、ぐるぐると考えのまとまらないわたしにおかまいなく、勇者様は次々と追い打ちをかけてくる。 |