【リサ】「……」 期待していた台詞と、あまりにかけはなれたそれに、わたしの肩は、がくっと音を立てて崩れ落ちた。 【リサ】(何故。何故よりにもよってそんな台詞をチョイスするのです……!) 【魔王】「駄目か?」 【リサ】「だっ、ダメに決まってるじゃないですか!」 【魔王】「何故だ」 まさか断られるとは思っていなかったと言わんばかりの、不思議そうな顔で、魔王様はたずねる。 【リサ】「な、なぜって……だって……それは、その……」 こちらも、まさか問い返されるとは思っていなかったため、とっさに返答が出来ず、 しどろもどろになってしまった。 【リサ】(そんな、だって、出会ったばかりで、そういうことは、まだ早いと思いませんか!? そもそも、好意のある女性に あの口説き文句はおかしいです! 愛しているとか、オレの太陽だとか、そこまで言えとは言いませんけど、お前を抱きたい、とか、 魔王様なら、夜伽を命じる、とか、せめて、他にもっと色々……)\ 【リサ】「他の言い方は無かったんですか……」 【魔王】「……他の言い方……」 【リサ】(そうです。あの流れで、わたしが甘い台詞を期待するのは、間違っていないと思います! 人生初の男性からの告白がアレだなんて、わたしが可哀想すぎます……!) わたしの指摘を受けて、魔王様はしばらく考えていたようだったが、やがて口を開いた。 【魔王】「お前に突っ込みたい」 【リサ】「よけい悪くなってます!!」 【魔王】「? ? ?」 魔王様は、なぜ怒られているのかわからないといった表情で、わたしを見つめる。 【リサ】「そ、そんな顔をしてもダメですからねっ!」 そんな困ったような悲しいような顔をされたら、まるでわたしが意地悪を言っているようで、 いたたまれない気持ちになる。 【リサ】(魔王様……。口数は少ないけど、常識的な人だと思ってたのに……。 魔族の人に、人間の、それも平凡な一般村民のわたしの常識を要求するのは、 勝手な押し付けかもしれないけど……。……はあ……) すっかり脱力しているわたしに、魔王様はさらにたたみかけてきた。 【魔王】「……やらない、か?」 【リサ】「もういいですって! わかりましたからっ!」 そう怒鳴ってしまってから、ハッとする。 【魔王】「……」 【リサ】(しまった。今のは失礼だったかも……) おそるおそる魔王様の顔色をうかがってみると、特に気にしたふうでもなく、あっさりと。 【魔王】「そうか」 【リサ】(……なんだ。良かった。はあ……やっと話が通じた……) そう安堵したのはつかの間で。次の瞬間。 【リサ】「きゃあっ!?」 |